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「一人ひとりに合った胃ろう食のオーダーメイド」

Fさん(26歳)

 

 娘は、生まれた直後からミルクを飲み込むことができず、経鼻栄養をしていましたが、20歳の時に胃ろうの手術を受けました。胃ろうから食べ物を入れることができるということを教えてもらったので、それが魅力だったのです。

 ところが術後の合併症を生じてしまい、胃ろうが使えない状況となり、最終的には胃ろうを諦めなければならなくなりました。そしてまた経鼻チューブの生活に戻りましたが、普通の食事を胃から入れてあげたいという願いが叶わなくなってしまったことに、とても落胆した日々を過ごしていました。

 

 5年半ほど前、水のような下痢が止まらなくなりました。薬をもらってもなかなか良くならず、悩んで悩んで長い月日がたちました。ある時、知人に勧められて、ある障がい者の施設で受診と相談をしたところ、経鼻チューブからでも食事が入れられる方法を知ることができたのです。相談に乗って下さった医師はこういわれました。

 「経鼻チューブからの液体栄養剤を注入している方にも食事を楽しんでほしいと考えていたところ、酵素剤を使って食事を液体にする方法を栄養士・調理師が見つけてくれました。それ以来この施設でも経鼻栄養の方にも、食事が提供できるようになりました。胃ろうにすることにまだ決心がつかないとか、病状によって胃ろうを作れない人にも、この方法であれば食事を入れてあげることができます。胃ろう食や液状食の良いところは、オーダーメイドの栄養食であり、かつおいしいこと。いくら成分がよい栄養剤でも、1つの製剤で全員の体質に合わせることはできません。しかし食事であれば、その時々の体調にあわせて調整してあげることができます。そして美味しいということは、とても大切です。腸内シグナルが活発に刺激され、各種ホルモンが分泌され、消化吸収だけでなく、精神面においても良い結果をもたらすことが最近の研究で明らかになっています。」

 

 大きな励ましと、食事をあげられる喜びを胸に、家に帰りました。早速、酵素剤を入れて食事をミキサーにかけると食事が液体状になり、細い管からも注入できるような状態の食事ができあがりました。その液体状の食事と豆乳、野菜ジュースなどを注入してみたところ、その晩から便が固まりました。全く奇跡のようでした。このような食事を毎日取り入れたことで、注入の回数も減らすことができ、夜の注入がなくなったおかげで、親子共々も夜はゆっくり眠ることができるようになったのです。